経営者の認知症は怖い
あなたは大切な誰かが認知症になったら、どうしますか。その人が、あなたの親が社長をしている会社のオーナー経営者だったら?
多くの中小企業では、オーナー経営者への権限集中が常態化しています。そのオーナーが認知症になれば、会社の存続すら危うくなることも珍しくありません。
オーナー経営者の認知症リスク
日本の高齢化は、中小企業の経営者層にも及んでいます。帝国データバンクの調査によれば、社長の平均年齢は59.5歳。4人に1人が70歳以上というのが実情です
加齢に伴い、認知症の発症率は高くなります。
65歳以上の高齢者の認知症有病率は以下の通りです。
65~69歳:1.5%
70~74歳:3.6%
75~79歳:7.1%
80~84歳:14.6%
85歳以上:27.3%
つまり、70代半ばを過ぎると、10人に1人以上の割合で認知症の人がいる計算になります。
オーナー経営者の認知症が会社に与える影響
では、経営トップの認知症は、会社にどのような影響を及ぼすのでしょうか。
影響その1:経営判断の迷走
物事の判断力が鈍り、会社にとって不合理な意思決定が増えていきます。
売上の落ち込みや、無駄なコストの増大などに直面するケースは少なくありません。
影響その2:従業員のモチベーションの低下
トップの混乱した言動に振り回され、従業員は不安にさらされモチベーションは低下の一途をたどります。
優秀な人材の離脱にもつながりかねません。
影響その3:金融機関の信用低下
代表者の健康不安は、金融機関の信用にも影を落とします。
新規の融資はおろか、既存の借入金の返済猶予にも応じてもらえない事態も考えられます。
影響その4:取引先の離反
代表者の異変を察知した取引先が、次々と離れていくことも珍しくありません。
信頼の毀損は、会社の存続を根底から揺るがしかねないのです。
こうしてみると、オーナー経営者の認知症は、想像以上に深刻な事態を招くことが分かります。
特に、日頃から「ワンマン経営」で組織化が不十分な会社ほど、甚大な影響を受けやすいと言えるでしょう。
経営者の認知症リスクへの備え
それでは、オーナー企業はどのように認知症リスクに備えるべきでしょうか。
ポイントは、「発症後の対応」から「発症前の備え」にシフトすることです。
具体的には、以下の3点を提案します。
提案1:後継者の計画的育成
認知症の発症に関わらず、経営者の高齢化は避けられません。
事業承継と後継者育成は、早めに着手することが何より大切だと言えます。
提案2:経営の見える化の推進
経営者の独断専行を避け、組織的な役割分担による意思決定体制を整備することが求められます。
会社の財務状況や経営課題を「見える化」し、社内で共有する取り組みが有効でしょう。
提案3:家族や株主との家族信託契約の締結
認知症の発症を想定して、家族信託契約を締結しておくことは大切です。
経営者の家族にとっても、認知症になった社長個人の預金が凍結されて使え無くなるリスクをカバーできるし、自社株を信託財産とする事で会社の株主総会の議決権を家族等に預けておく事ができます。
この株を信託するやり方は後継者育成のステップとしても有効です。
「備え」は会社の未来を守る
経営者の認知症は、誰にでも起こり得る身近なリスクです。だからこそ、「対岸の火事」と楽観視することなく、早めに備えを固めておくことが肝要なのです。
認知症のリスクから会社を守り、従業員の雇用を守る。そして何より、経営者自身の尊厳を守る。
そのための「備え」に、今から一歩を踏み出してみませんか。
中小企業相続対策専門相談室は、認知症リスクの対策のサポートをいたします。
認知症の不安をかかえる経営者やその家族の方にも自社の将来に不安を感じる後継者や幹部社員の皆さまにも、安心してご相談いただけます。