「うちの息子に経営を任せたら、すぐに会社が傾くに違いない…」
多くの中小企業オーナーを悩ませる、後継者問題。
会社の将来を託せる「理想の後継者」を探し求めるあまり、目の前の現実を直視できずにいるケースは少なくありません。

親族だから大丈夫」は幻想

血は水よりも濃い。
特に同族経営の中小企業では、経営の承継をめぐって親族のしがらみが複雑に絡み合います。

「今さら他人に経営を任せるわけにはいかない」
「自分の代で事業を畳むなんて先代に申し訳ない」
「結局、長男に継がせるしかないのかな…」

後継者選びに迷うオーナー経営者の本音は、どこかで「親族なら何とかなるだろう」という甘い期待を抱いている部分があるのかもしれません。

しかし現実は厳しいものです。
親族だからこそ、能力・意欲不足の後継者に経営を委ねることで、かえって会社の存続を危うくするリスクも大きいのです。

事例をご紹介します。
【事例1：教育熱心な親を持つサラリーマン長男】
大手IT企業に勤務し、順調なキャリアを歩む長男。
「一流企業の経験を活かして、父の会社を発展させてほしい」
親の期待を背負い、重い腰を上げて家業の経営に携わることになりました。
しかし、右肩上がりの成長を続ける大企業の感覚では、中小企業の経営の難しさについていけません。
社員とのコミュニケーションもうまくいかず、業績は低迷の一途をたどります。

【事例2：跡取りを期待される自由奔放な次男】
「やりたいことを見つけるまでは、会社を手伝ってほしい」
親の言葉に押され、何となく家業を継ぐことになった次男。
しかし、仕事のやりがいを見出せず、すぐに飽きてしまいます。
新規事業の立ち上げに突発的に多額の資金をつぎ込むなど、リスキーな経営判断が続きます。
周囲の反対を押し切って強行突破を繰り返した結果、会社は資金繰りに窮することに。

「親族だから大丈夫」は、残念ながら幻想に過ぎません。
事業を継ぐやる気と能力を兼ね備えた人材を、客観的に見極める冷静な目が経営者には求められるのです。

後継者教育は「結果」ではなく「過程」

とはいえ、理想的な後継者が自然と現れることを待つのも得策とは言えません。
計画的な後継者育成こそが、スムーズな事業承継の大前提だからです。

事業を引き継ぐ覚悟を決めた後継者候補に対して、以下のようなステップで経営の基礎体力をつけさせることが肝要です。

ステップ1：現場を知る
営業、製造、管理など、様々な部署を実際に経験させます。
現場の社員と同じ目線に立って仕事の流れを学ぶことで、経営者としての視座を養います。

ステップ2：数字に強くなる
財務諸表の見方、原価管理の重要性など、”数字”の感覚を身につけさせます。
金勘定の厳しさは、経営判断の基礎となる重要なスキルです。

ステップ3：経営判断を経験する
与信管理、設備投資、新商品開発など、経営上の意思決定プロセスを実践させます。
トップの背中を見て、経営者の考え方や判断基準を学ばせることが大切です。

ステップ4：経営理念を継承する
創業の精神、商売の信念など、先代から引き継ぐべき経営理念を浸透させます。
「うちの会社らしさ」を追求する姿勢こそが、時代を超えて事業を存続させる原動力となるのです。

後継者教育は、結果ではなく過程が重要だと言えます。
理想の後継者を待つのではなく、「経営者の卵」を計画的に育てる意識を持つことが、オーナー経営者に求められる資質だと言えるでしょう。

第三者の目で「気づき」を得る

もちろん、この過程をオーナー経営者だけで進めるのは容易ではありません。
我が子を客観的に評価することの難しさは、誰もが感じるところだからです。

だからこそ、外部の専門家の視点を取り込むことが重要になります。
経営コンサルタントや中小企業診断士など、中立的な立場から後継者候補を評価してもらうことで、オーナー経営者自身も新たな「気づき」を得られるはずです。

「うちの後継者では、このままでは会社がもたない」
そんな危機感を抱いているオーナー経営者は、ぜひ一歩踏み出してみてください。
「見えていなかった課題」に早めに気づくことこそが、事業承継の成否を分ける分岐点になると言っても過言ではありません。

中小企業相続対策専門相談室は、士業ネットワークを活かして、後継者教育の伴走支援を行います。
理想の後継者選びに悩むオーナー経営者の皆さまに、「外の目」を通した気づきの機会をご提供いたします。
親族だからこその悩み、家族だからこその葛藤。そのどちらも受け止めながら、会社の未来図を一緒に描いていく。
そんな息の長い支援を、私たちにお任せください。