売れない自社株も相続税の対象です
中小企業のオーナー経営者にとって、自社の株式が相続財産の中で最大になってしまうケースが少なくありません。
しかし、自社株式は上場株式のように売買できるマーケットがあるわけではなく、譲渡制限が付いていることもあるため、換金性に乏しいという特徴があります。
このため、「自社株は相続税の対象にならないのでは?」と考える方もいらっしゃるかもしれません。
結論から言えば、そうではありません。売れない自社株式も、立派に相続税の課税対象なのです。
自社株式の評価方法
相続税の計算上、自社株式の評価は、以下のいずれかの方法あるいはそれらが組み合わされて計算され評価されます。
1.類似業種比準方式
同業他社の株価をベースに、規模や収益性を勘案して自社株式の価値を算定する方法です。
課税時期の属する月の類似業種の株価を基準に計算します。
2.純資産価額方式
会社の資産と負債の差額(純資産)を株式数で割って、1株あたりの価値を算定する方法です。
簿価ではなく相続税評価額を使用するため、含み資産があると株価が高くなりがちです。
3.配当還元方式
過去2年間の配当金額を利率で還元して株価を算定します。
上場企業であれば株式市場の時価で評価されますが、非上場企業の場合はこれらの方式で評価されるため、思わぬ高評価になることも珍しくありません。
自社株式を多額に保有するリスク
仮に自社株式の評価額が1億円だとします。オーナー経営者が全株式を保有していた場合、相続税の課税対象となる財産が1億円増えることになります。
株式以外の相続財産が5,000万円、妻と子供2人の相続だとすると、
課税遺産総額:1億5,000万円ー4,800万円(基礎控除額)=1億200万円
となり、1億200万円に対して相続税がかかることになります。
自社株式には換金性がないため、相続人(特に後継者以外)にとっては大きな負担となることが予想されます。
自社株式の相続対策
自社株式の相続リスクに備えるためには、計画的な対策が必要不可欠です。代表的な対策として、以下のようなものが挙げられます。
1.事業承継税制の活用
非上場株式等について相続税・贈与税の納税猶予制度があります。
一定の要件を満たせば、相続税•贈与税の納税が納税猶予されます。
2.株式の分散化
オーナー経営者が保有株式の一部を生前贈与等で分散することで、相続財産を減らす方法です。
ただし株式の分散によって経営権が分散してしまう点には注意が必要です。
3.種類株式の活用
議決権制限株式など、様々な権利内容の株式を発行することで、株主の権利を調整する方法です。
議決権制限株式を後継者に集中させつつ、非後継者には剰余金配当請求権付き株式を発行するなどの工夫が考えられます。
4.生命保険の活用
オーナー経営者が生命保険に加入し、保険金を非後継者の相続対策資金に充てる方法です。
相続発生後のトラブル防止に有効ですが、保険料負担などのデメリットもあります。
これらの対策は、メリット・デメリットや会社の状況によって、使い分ける必要があります。
ケースバイケースで、最適な対策を組み合わせることが重要だと言えるでしょう。
専門家への相談が何より大切
自社株式の相続対策は、オーナー経営者個人の問題であると同時に、会社の存続にも関わる重要な経営課題です。税務のみならず、法務や財務など幅広い知見が求められるため、専門家の支援が欠かせません。
特に自社株式の評価は、専門的な計算が必要で、時期によっても変動します。将来を見据えた計画的な対策には、税理士など専門家の適切なアドバイスが何より重要だと言えるでしょう。
中小企業相続対策専門相談室は、税務・法務・M&A・財務など、事業承継の各分野に精通した専門家集団です。オーナー経営者の立場に立って、自社株式の評価から承継スキームの構築まで、ワンストップでサポートいたします。
自社株式の相続リスクは、早めの対策が何より大切です。漠然とした不安を抱えているオーナー経営者の方は、ぜひ一度当相談室の無料相談をご利用ください。私たちが、会社と家族の未来を守るお手伝いをさせていただきます。
以上のように、自社株式の問題は、中小企業の事業承継における最大の課題の一つです。専門家の知恵を借りながら、計画的に対策を進めていくことが、円滑な事業承継の実現につながります。オーナー経営者の皆さまの一助となれば幸いです。