まだ間に合う今年の贈与-年末年始を承継のチャンスに
2025年も残りわずかとなりました。年末は暦年贈与の締め日であり、相続時精算課税制度の活用期限でもあります。さらに、家族が集まる年末年始は、事業承継や財産承継について話し合う絶好の機会でもあります。
中小企業の経営者にとって、この時期をどう活用するかが、来年以降の相続対策や節税に大きく影響します。
年内に実行できる贈与策
1.暦年贈与 – 最も手軽な贈与方法
暦年贈与では、1人あたり年間110万円までの贈与が非課税となります。12月31日までに贈与を実行すれば、今年分の基礎控除を活用できます。
中小企業経営者が今すぐできること
• 現金・預金の贈与
最も簡単で確実な方法です。銀行振込で記録を残し、贈与契約書を作成しておきましょう。
• 複数人への分散贈与
配偶者、子ども、孫など複数人に贈与することで、一度に多くの財産を非課税で移転できます。
例:配偶者、子2人、孫2人の計5人に110万円ずつ贈与 → 合計550万円が非課税
実行のポイント
• 12月31日までに受贈者の口座に入金を完了させる
• 贈与契約書を作成し、日付を明記する
• 振込記録を必ず保管する
• 贈与税申告が不要でも、記録は7年間保管する
2.相続時精算課税制度 – 今年でも活用可能
制度の概要
60歳以上の父母・祖父母から18歳以上の子・孫への贈与に適用できる制度で、2,500万円まで贈与税がかかりません。さらに、令和6年以降は年110万円の基礎控除も併用できるようになりました。
年内でも間に合う理由
相続時精算課税制度の届出期限は「贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日まで」です。つまり、2025年12月に贈与を実行しても、2026年3月15日までに届出すれば制度を適用できます。
年内実行が可能な資産
• 現金・預金の大型贈与
一度に大きな金額を移転したい場合に有効です。評価額が明確なため、12月でも贈与実行が可能です。
• 上場株式などの有価証券
株価は市場価格で決まるため、評価に専門家の算定は不要です。年内でも贈与契約と名義変更を完了できます。
年内実行が困難な資産
• 不動産
路線価や倍率方式による評価計算、贈与契約書作成、登記申請(法務局は12/29〜1/3休業)などに時間を要するため、年内の完了は困難です。
• 自社株(非上場株式)
類似業種比準価額や純資産価額の算定など、専門家による複雑な評価が必要なため年内の贈与実行は困難です。
その他の注意点
• 一度選択すると暦年贈与に戻れない
• 相続時に贈与財産が相続税の課税対象となる
【評価が必要な資産】もう少し早めの準備が必要
不動産の贈与
不動産の贈与には以下の作業が必要で、年内の完了は困難です。
必要な作業
- 不動産評価
路線価方式や倍率方式による評価計算(物件数や内容により期間は変動) - 贈与契約書の作成
不動産の表示、贈与条件などを明記 - 登記申請
法務局での所有権移転登記
※法務局は12月29日〜1月3日まで休業
来年以降に計画する場合の流れ
年明けから余裕を持って準備を進めることで、確実な贈与実行が可能になります。
• 春頃:専門家に相談し、評価と贈与計画を立てる
• 初夏〜夏:贈与契約書を作成し、贈与を実行
• 夏〜秋:登記申請を完了
• 翌年3月15日まで:贈与税申告
※不動産の数や内容によって必要な期間は異なりますので、早めに専門家にご相談ください。
自社株の贈与
自社株の評価は不動産以上に複雑で、専門家による評価が不可欠です。
株価評価に必要な作業
• 直前期の決算書類の精査
• 類似業種比準価額の算定
• 純資産価額の計算
• 会社規模に応じた評価方法の適用
評価に必要な期間
会社の規模、事業内容、資産構成などによって評価にかかる期間は大きく異なるため、計画的に早めの準備が必要です。
事業承継税制の活用を検討する場合
事業承継税制を利用すれば、自社株の贈与税や相続税が猶予・免除されます。ただし、事前準備と複数の要件があるため、年単位での計画が必要です。
【年末年始こそチャンス】家族との話し合いを
なぜ年末年始が重要なのか
- 家族が集まる貴重な機会
普段は離れて暮らす家族が一堂に会するのは、年に数回しかありません。相続や事業承継の話は、顔を合わせてこそ本音で話せるものです。 - 新年という節目での意識共有
新しい年を迎えるタイミングは、将来について考える良い機会です。家族全員が前向きな気持ちで話し合えます。 - 時間的余裕がある
年末年始の休暇中は、じっくりと時間をかけて話し合うことができます。
年末年始に話し合うべきテーマ
テーマ1:事業承継の方向性
中小企業の経営者にとって、最も重要なテーマです。
話し合うべきポイント
• 後継者候補は誰か(親族内 or 親族外)
• 後継者候補の意向と覚悟
• 承継のタイミング(いつ頃を想定するか)
• 会社の将来ビジョン
こんな話し方がおすすめ
「来年で私も〇歳になる。まだ元気だが、会社の将来について、そろそろ真剣に考えたいと思っている。みんなの率直な意見を聞かせてほしい。」
テーマ2:財産の全体像の共有
相続が発生してから初めて財産内容を知ると、家族間でトラブルになりがちです。
共有すべき情報
• 個人資産の概要(不動産、預金、株式など)
• 会社関連の資産と負債
• 代表者としての借入金や保証債務
• 生命保険の契約内容
こんな話し方がおすすめ
「もしものときに家族が困らないよう、私の財産がどうなっているか、概要だけでも知っておいてほしい。」
テーマ3:相続対策の方針
具体的な対策の方向性について、家族の理解を得ることが重要です。
話し合うべき内容
• 生前贈与を進めるか
• 遺言書を作成するか
• 家族信託を活用するか
• 認知症対策をどうするか
こんな話し方がおすすめ
「相続税の負担を減らし、みんなが公平に財産を受け取れるよう、計画的に対策を進めたい。専門家にも相談しながら進めていくので、協力してほしい。」
テーマ4:株主構成と株式の承継
中小企業特有の課題として、自社株の承継は重要なテーマです。
話し合うべきポイント
• 現在の株主構成(名義株の有無を含む)
• 後継者に株式を集中させる方針
• 事業に関わらない相続人への配慮
こんな話し方がおすすめ
「会社の株は後継者に集中させる必要があるが、他の家族にも公平になるよう、他の財産で調整したいと考えている。」
話し合いを成功させるポイント
- 強制せず、意見を聞く姿勢で
一方的に決めたことを伝えるのではなく、家族の意見や希望を聞く姿勢が大切です。 - 全員が納得できる公平感を目指す
「公平」は必ずしも「平等」ではありません。それぞれの立場や貢献度を考慮し、全員が納得できる分配を目指しましょう。 - 感情的にならない
お金や財産の話は感情的になりがちです。冷静に、事実ベースで話を進めましょう。 - 専門家への相談を前提に
その場で決定せず、「専門家に相談して、具体的な方法を検討しよう」という方向でまとめるのが良いでしょう。
よくある質問(FAQ)
Q1: 年内の贈与が間に合わなかった場合、どうすればいいですか?
A: 来年1月から計画的に進めることが大切です。1月から準備を始めれば、来年の年末には確実に実行できます。焦らず、専門家と相談しながら進めましょう。
Q2: 家族に財産の話をすると、相続争いが起きませんか?
A: むしろ、何も知らされないまま相続が発生するほうが、トラブルになりやすいです。生前に方針を伝え、理解を得ておくことで、円満な相続につながります。
まとめ:年末年始を最大限に活用しよう
年末年始は、相続対策・事業承継を前進させる絶好の機会です。
今年中にできること
• 現金・預金の暦年贈与(12月31日まで)
• 相続時精算課税制度を利用した現金・有価証券の贈与
年末年始にすべきこと
• 家族との話し合い
• 事業承継の方向性の確認
• 財産の全体像の共有
• 来年の行動計画の策定
来年に向けて準備すること
• 専門家への相談
• 資料の準備
• 不動産や自社株の評価
• 計画的な贈与・承継の実行
中小企業の相続対策専門相談室では、年末年始の贈与実行から、来年以降の長期的な相続対策・事業承継まで、トータルでサポートいたします。
主なサービス
• 相続税シミュレーション
• 自社株評価と事業承継計画
• 生前贈与のコンサルティング
• 遺言書・家族信託のサポート
• 事業承継税制の活用支援
初回相談は無料です。年末年始の休暇明けに、ぜひお気軽にご相談ください。
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